熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
「ケータイがつながらなかったのが、なによりの証拠だろ」
「え…?」
「マンションの材質とか構造上の問題なのか、電話会社のエリアの問題なのかは知らねぇけど、俺ンちのケータイの電波状態はサイアクで、99%いつも圏外状態。だから、電話もつながらねぇし、メールが2時間遅れて届くくらいのことは日常茶飯事なんだって。まさか忘れてたわけじゃねぇだろ?」
そういえば、そうだった。いや、忘れていたわけじゃない。
「覚えてるよ。でもケータイがつながらなかった、ってことだけで、その時間、自宅にいたことの証拠にはできないと思うよ。それに念のためにPCにもメールしたし、航平くんちの家の電話にもかけたし」
「PCに届いたメールのチェックが遅れたのは、あの時間、ちょうどPCで画像の整理をしていたからだ。なんせ昼間、新聞部員として九月祭1日目の様子をいっぱい撮影していたからな。ホラ、お前ら演劇部の発表の様子とか、ほかの部の写真とかをな」
「じゃあ、電話は?」
「ひょっとして話し中だったんじゃね?」
あたしは黙ってうなずいた。
「あの時間、おふくろがちょうど長電話してたから、つながらなかったんだと思うぜ」
「そうだったんだ…」