熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
あのとき、あたしは彼と連絡がつながらないことに対してひどくイラついていて、どうして連絡がつかないのか?なんて、冷静に考えていなかったような気がする。
「ほかにも証拠はある。一目瞭然のな」
「一目瞭然…?」
「画像整理のために新規作成したフォルダの“プロパティ”を見れば、そのファイルの作成日時が記録されている。年月日はもちろん、何時何分何十秒まで全て詳しくな」
PCのフォルダにマウスをあてて、まずは右クリック。そしてプロパティを見れば、そのフォルダの作成日時が分かるのだ。
「そっか! その時間、パソコンの前にいなければ、そのフォルダを作成することはできない、ってことか!!」
彼のアリバイは証明された。いともたやすく。
「そーゆうこった♪」
そう言って微笑みながら、おでこの真ん中から、手グシで長めのサラサラ前髪をわさーっと後ろのほうに、かき上げる彼。
「分かったか? 俺はウソなんかついてない。…ってことはウソをついてるのは喜屋武みさきのほう、ってことになる」
「でも、なんで!? なんで航平くんに乱暴されたなんてウソついたんだろ……?」