熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
「それは直接本人に訊くしかねぇな」
みさきちゃんに電話で、会って話したいことがあるんだけど…と告げると、意外にも彼女は素直に、約束の場所に一人で姿を現した。
あれだけ激しかった夕立ちは、もうスッカリ治まっていた。彼女とよく出掛けた海の見えるカフェ。あたしはそこに、乾燥機で完全に乾いた自分の学生服を着た航平くんと一緒に並んで座っていた。
そして並んで待っていたあたしと彼を見るなり、彼女はこう言った…、
「なぎさちゃんたちが、そうやって一緒にいるところを見ると、みさきのついたウソが全部バレちゃった、ってことかな。ウフッ♪」
彼女の発言は意外だった。たとえどんなに追求されてもウソを認めずに、トボけとおされることを覚悟してたからだ。
「いらっしゃいませ。ご注文はなんになさいますか?」
水とおしぼりを持ってウエイトレスさんが、みさきちゃんのところにやってきた。
「いらない。だって、みさき、スグ帰るもん」
「失礼いたしました」
かすかに、でも不快な表情を見せてウエイトレスさんはカフェの奥へと戻っていった。