熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
今、この瞬間、出会ったばかりの頃みたいな状態に戻っていたのは。あたし1人だけじゃなかったみたい。
自信がなくて、勇気がなくて、オドオド、ビクビクしながら、同い年のクラスメイトに対して敬語を使っているあたし。
いつもクールで近寄りがたくて、勇気をふりしぼって話しかけても、スカした感じで冷たく突き放していた出会ったばかりの頃の彼。
もう戻れないんだ……2人で夢を語り合ったり、メールや電話でケータイ小説の添削をしてもらったりしていたあの頃には。
そう思うと、涙が止まらなくなって、それでも声だけは上げまいと、あたしは血が出そうなくらい強く左手を噛んだ。
「もう一度、友達からはじめるのは無理だ」
なんで、そんなひどいことを何度も言うの? 夢のハナシを一緒にした彼は、もうどこか遠いところに行ってしまったの?
完全に諦めかけていたそのとき―――
「そもそも、もう一度、友達になんかならなくても、俺はなぎさからの絶交を承知したなんてことは、ひと言も言っていない」