熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~


今、この瞬間、出会ったばかりの頃みたいな状態に戻っていたのは。あたし1人だけじゃなかったみたい。

自信がなくて、勇気がなくて、オドオド、ビクビクしながら、同い年のクラスメイトに対して敬語を使っているあたし。

いつもクールで近寄りがたくて、勇気をふりしぼって話しかけても、スカした感じで冷たく突き放していた出会ったばかりの頃の彼。


もう戻れないんだ……2人で夢を語り合ったり、メールや電話でケータイ小説の添削をしてもらったりしていたあの頃には。

そう思うと、涙が止まらなくなって、それでも声だけは上げまいと、あたしは血が出そうなくらい強く左手を噛んだ。


「もう一度、友達からはじめるのは無理だ」


なんで、そんなひどいことを何度も言うの? 夢のハナシを一緒にした彼は、もうどこか遠いところに行ってしまったの?


完全に諦めかけていたそのとき―――


「そもそも、もう一度、友達になんかならなくても、俺はなぎさからの絶交を承知したなんてことは、ひと言も言っていない」

< 161 / 200 >

この作品をシェア

pagetop