熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
そして当日は、深いため息が出るほどの雲ひとつない晴天だった。逆に少しくらいは雲が出ていてほしかった。
9月とはいえ、グラウンドはまだ真夏なみの炎天下にあって、種目がはじまる前の校長先生の話を聞いている段階で、すでに何人かの女子がバタバタと倒れていた。
あたしも倒れよう。そしたら1000M走だって走らないですむ。
そう思ったあたしの目に飛び込んできたのは、ジャージ姿の体育教師・具志堅勝男(グシケンカツオ)先生が、倒れた女子を野獣のような毛むくじゃらの両手でもって“おんぶ”しているところだった。
うわっ。ここで倒れたら、あたしもあの毛むくじゃらの手で、おんぶされちゃうワケ!?
そう思うと、死んでもここで倒れるわけにはいかないと思うあたしがいた。
波乱の幕開けだったものの、プログラムどおりに種目が次々と行なわれていくうちに、80M走と大縄跳びも、アッという間に終わってしまった。
予想どおり、あたしの揺れる胸はそれなりの注目を集めたものの、2つの種目とも短い時間で終わったのが、せめてもの不幸中の幸いだった。
そして――――