熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
そしていよいよ最終最悪の地獄・1000M走が目前と迫ってきた。
最後の悪あがきで…、
「イタタタタ……緊張しすぎて急におなかが痛くなったんですけど……」
…と多少、大袈裟に痛がって言ってはみたものの、毎年いろんな理由をつけてはサボろうとする生徒が多かったせいか、保健の女の先生はあたしに…、
「じゃあ、トイレに行ってきなさい」
…とだけ言い、それ以降はあたしの言うことに一切耳を貸そうともしなかった。
結局、あたしはまるでなにかの罰ゲームでもやらされているかのように、ユッサユッサと揺れる大きな胸をみんなの前にさらしながら走るしかなかった。
おまけに普段と違って今日は生徒の父兄たちも大勢校内に入っていたから、あたしは学校関係者以外の一般の人たちにまで胸をチラ見どころか“ガン見”されてしまった。
たぶん800Mくらい走った頃だろうか? ノドの奥で鉄みたいな味がした。カラダの内側のどこかで血が出ていたのかもしれない。陽炎(カゲロウ)さえ見えそうな炎天下のもと、死にそうになりながら、父兄の席の前を走っているとき…、
「まぁ、最近の子は胸が大きいわねぇ!」
どっかのオバちゃんの声が聞こえてきた。