熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~


もうイヤだ。オトナになってお金が貯まったらゼッタイ美容外科に行って胸を小さくする手術をしてもらおう!


走りながら、でも頭の中で、本気でそう思ったとき、父兄席のどこからか、ねばっこい、まとわりつくような暑苦しい視線を感じて、あたしはカラダの震えを覚えた。

なんだろう?と思って何げに父兄席のほうを見ると、小太りで、眉毛が太くて、ヒゲの剃り後が青々としたアキバ系のオトコが、ビデオカメラをあたしに……というより、あきらかにあたしの胸だけに向けていた。

あの人も誰かの父兄なんだろうか? それとも父兄のフリをして、女子たちの無防備な姿を撮影しにきた盗撮マニアだろうか?

いや、その人が誰かなんてことは問題じゃない。問題なのはあたしの胸が盗撮されているということだ。


カラダが震えるほどのゾッとする寒気に襲われたあたしは、胸の前で両手をクロスさせて、左右の二の腕を暖めようとこすった。

すると…、

「手がジャマなんだよっ」

…と、独り言みたいに、だけどはっきり聞こえる声で、アキバ系・盗撮マニアが言った。


「えっ…!!!」
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