熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
「先生、コイツ、女子が走ってるところをこのビデオカメラで盗撮してましたっ」

「へ、へ、ヘンな言いがかりは、よ、よ、よしてくださいよっ。ぼ、ぼ、僕はココの生徒の、ふ、ふ、父兄なんですからっ」

顔中にダラダラとアブラ汗をかきながら、しどろもどろになっている盗撮マニア。

「いーからこっちに来い! ハナシは向こうで聞く!」

「離せっ。離せよぉーっ」

先生に、腕を後ろにねじり上げられた態勢で、盗撮マニアが連行されていく。


「なぎさ、大丈夫か」

うずくまって、ふくらはぎをさすっているあたしに航平くんが駆け寄る。

「こむらがえりだと思うっ……ふくらはぎの筋肉が痛くて立ち上がれないっ……」

「じゃあ、俺が保健室まで連れてってやる。ホラ、俺の背中に…」

そういって、あたしの前に背中を向けてしゃがむ彼。

「おんぶしてくれる、っていうのっ…?」

「そうだ、ホラ」

具志堅先生におんぶされるよりは、ずっといい。なん百倍もいい。でも……。

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