熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
それでも訊いてしまったのは、もしかして彼が、中2のときはじめて付き合ったカレシ同様、あたしの胸目当てだったんじゃないか、と不安な気持ちになったからだと思う。


でも彼は、こう答えた。子どもみたいにキラキラ目を輝かせて。

「だって1度でいいから沖縄の海で泳いでみてぇし♪ 実は俺、沖縄に越してきて、まだ1度も海で泳いでねぇんだよ♪」

「…!」

彼の純粋すぎる思いを聞いて、あたしは恥ずかしい気持ちでいっぱいになった。ほんの一瞬でも、あたしのことはタダのカラダ目当てだと疑ってしまった自分の卑屈さがすごくイヤだった。


「俺さ、学校にいるとき、いつも海のほうばっか見てんだろ?」

「うん…」

教室の彼はいつも、オーシャン・ビュー・シートで、いかにもつまらなさそうに頬杖をついて、窓の向こうの海を見ていた。

「実は俺あんとき、ああっ、泳ぎてぇ~って思いながら、いつも沖縄の海を見てたんだ」

「へぇ、そーだったんだ…」

海を見ながら、いつもなに考えてるんだろう?と思っていたけど、まさかそんなことだったとは。

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