熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
学校以外で泳ぐことなんてないし、普通の水着って持っていなかったから、本当は学校のプールのときに着ているスクール水着を着ようと思ったけど、さすがにあんなダサダサの水着じゃ、一緒にいる航平くんがかわいそうだと思って、昨日、勇気をふりしぼってお店で買ってきたばかりのおろしたて。

こんな面積の広いビキニだけど、でも今のあたしにはせいいっぱい。

胸に、おヘソに、太ももに、まわりの男の人たちの視線がチクチク突き刺さるのを感じる。あたしにはその視線が、まるで肌の露出しているところだけを狙って飛んでくる“蚊(か)”みたいでウザかった。

あたしは胸が揺れないように、ゆっくり慎重に歩いた。まるでコップになみなみと注いだ水がこぼれないようにするような足取りで。

いや、でも、こうも表現できる。遠くに見える彼に向かって、教会のヴァージンロードをゆっくりゆっくり歩いていくみたいにも。


遠くを見ると、彼が気持ちよさそうにスイスイ海を泳いでいる。


太陽がカンカンと照りつける真昼の砂浜。

そこはジリジリ焼け付く熱砂のフライパン。

熱くて、熱くて。

あたし、このままじゃヤケドしちゃいそう。

“ざざーっ…”



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