熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
あたしは恥じを全部脱ぎ捨てる。

いや。ちがう。

むしろ、誇りを胸に、一途で健気な乙女のプライドを胸に、恥ずかしがらずに、まっすぐにキミの瞳を見るよ。


「航平くん……」


彼の瞳にあたしがうつっていた。


「よかったな。これでお前のケータイ小説に、“まりな”と“ナゾの転校生”のデートシーンを書き足せるな」

「うん、ありがとう。航平くんのおかげだよ」

「あのさ、ついで、って言っちゃなんだが」

「ん?」

「どーせならさ、もうワンシーン書き足したほうがいいんじゃね?」

最初、あたしには彼が何を言おうとしているのか分からなかったけど…、

「あの小説は実話を元にした“純愛小説”だろ? だったら、ヤッパ、まりなとナゾの転校生が友達同士のカンケーから、カノジョとカレシのカンケーになるシーンを書き足さねぇといけねぇんじゃねぇかと思うんだ」

ここまで言われて、彼のしようとしていることが分かったような気がした。

< 190 / 200 >

この作品をシェア

pagetop