熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
「あたしにかまわないでください……」
あたし、なに言ってんの? なんで、あたしのこと助けてくれたヒトに向かって、こんなこと言ってんだろ?
そのときのあたしには正常な判断能力がなかったのかもしれない。
「…ってお前、血が出てんじゃねぇかよ」
「痛くないですし放っといてくださいっ! これ以上、ことを荒立てないでくださいっ!!」
「お前、それだけデカイ声が出せるんなら、黙ってないでコイツに言い返せ」
「オイ、お前ら、なに騒いでるっ」
声を聞きつけたのか、ジョージ先生が慌てて教室に駆け込んできた。
「先生っ、安座間が先生の大事にしていた花瓶を割りましたっ」
なおも浴びせかける島袋くんの声が、あたしの耳には悪魔の声みたいに聞こえた。
「ウソついてんじゃねぇ。お前がホウキを振り回していて自分で割ったんだろうが。彼女はその場に居合わせただけだ」
「そうか。島袋はこないだもチャンバラごっこをして注意を受けたばかりだろ? 放課後、職員室の俺のところに来い。いいな?」
「はぁ~い…」