熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
あたしは額に汗しながら真剣に舞台上のみさきちゃんをビデオカメラで撮影しながらも、アタマの中ではどうでもいいようなことばかりを考えていた。
みさきちゃんは練習のとき、あとで自分の演技をチェックしたいからと言って、いつもビデオで撮影させていて、あたしはいつの間にか彼女の専属カメラマンになってしまっていた。
ビデオで自分の演技をチェックするという行動は、彼女の演劇にかける情熱の表れだ。
あたしなら自分が演技しているところなんて恥ずかしくてゼッタイに見れないし、それ以前に人前でなにかをすること自体がすでにムリ。
でも、自分で自分が演技しているところを見て喜ぶなんて、みさきちゃん、どんだけ自分が好きなのよ、とも思う。
まぁ、たしかにオンナのあたしから見ても、みさきちゃんはカワイイと思うし、目の保養になる。撮影していて見とれそうになることもある。彼女と幼なじみというだけで、あたし自身の存在価値までランクアップしたような気になるから不思議だ。
でも今日だけはゆったり見とれる気分じゃなかった。
…ってか、あたし早く帰りたいんだよ。これ以上、1秒だってサウナ状態はガマンできないし、行かなきゃいけないところがあるし。