熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
「あ…はい…アザマ…安座間なぎさです」

整理券と引き換えに用意された小説本の表紙の裏側に、真紅のペンでサインをしてくださる神さま。モチロンあたしの名前入り。世界でただ一つだけの、神さまがあたしのためだけに書いてくれたサイン。このサイン本はあたしの一生の宝物…家宝だ。

「あ、ありがとうございますっ」

こないだみんなの前で謝罪したジョージ先生に負けないくらい、深々と頭を下げているあたしがいた。


「あの、あたし……今まで誰にも話したことないんですけど、実は……実は小説家志望なんですっ」

本当に誰にも話していない。

家族にも友達にも、幼なじみのみさきちゃんにだって話していない。

話せば…、

「そんなの、雲をつかむような話だよ」

…って、みんなにバカにされると思ったから、誰にも内緒にしていたことだけど、あたしの夢は、魚住とと先生のような超売れっ子小説家になることだった。

今は演劇部の地味で目立たない裏方だけど、いつかあたしも表舞台に立って、超・ウルトラ・グレート・デラックス・スペシャル・ゴージャス・ハイグレード・アルティメットな安座間なぎさ様に、ヴァージョンアップするんだ。それがあたしの夢。
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