熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
美帆とは小学校で同じクラスになったこともあるけど、幼稚園そして小1から6年まで、ずっと同じクラスだったみさきちゃんと違って、トクベツ仲がよかったというわけでもなく“幼なじみ”というよりは、お互いに顔を見知っているだけの単なる“顔なじみ”という程度の間柄でしかなかった。

だけど、真っ赤なランドセルをしょっている頃から知っている彼女が、気づかないうちにあたしを置き去りにして、ひとりでオトナの階段のずっと先の上のほうまで登っていた。

身近な存在だと思っていた人が、自分の知らない間に、もう手の届かない、住む世界が違う人になっていたのかと思うと、ある意味、裏切られたような淋しさと悔しさ、そして怒りの感情さえあった。

先生に対してもそうだ。昨日までの気持ちがみんなウソだったように、今は、教え子に手を出した先生のことを不潔だと嫌悪しているあたしさえいる。みさきちゃんはどう思っているんだろう?


「美帆ちゃん、やるね~」

電話の向こうのみさきちゃんは、まるで他人事のように、いつもと変わらないテンションだった。彼女にとって今回のことはそれほどショックじゃなかった、ってコト?

「あ~ァ、これでファーストキス体験者第1号は美帆ちゃんになっちゃったね」

たしかにあたしの知るかぎり、美帆は身近な女子の中では体験者第1号だ。でも、ソレは彼女がウソをついていなかったという前提があってはじめて言えることだ。

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