熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
比嘉くん、学校ではいつもつまらなさそうな顔して窓の外ばかり見ているのに、今日はすごく楽しそう。あたしと会ってて楽しいってコト? それとも、魚住センセと握手してハイテンションになってるだけとか? 訊きたいよっ。質問したいっ。
でも、意気地がなくて話しかけられない。学校で会っているときと違って、今日はこんなに気さくな感じなのに。
どうしよっか? 訊こうか…? 勇気を出して訊いてみよっか……?
…なんて、あたしが一人で迷ってるうちに、彼が言った、さらりと。
「じゃ、俺、用事あるし、そろそろ帰るわ」
一瞬、自分の耳を疑った。
えっ、もう帰っちゃうのっ…!?
「今日の写真はちゃんとプリントアウトして、あさっての登校日に渡すよ。じゃ、また学校でな。バイバイ」
言い終わるなり、あたしの前からさっさと走って行ってしまう彼だった。
バイバ…イ……。
あたしがずっと後ろ姿を目で追っているというのに、彼は一度も振り向こうともしないまま人ごみの中に消えていった。
ひとりその場に取り残されたあたしは、呆然と立ちつくすしかなかった。