熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
だけど、待てど暮らせど彼は来なかった。いつまで経っても来なかった。

冬の日の午後の木枯らしはとても冷たくて、あたしは一人、寒さと淋しさとに凍えて震えながらも、彼のことを信じて偲んで耐えて我慢してずうっと待ち続けていた。

「ゴハンですよ~」

…と母に呼びに来られるまで、ずうっと、ずっとずっと待ち侘びていたのに、来てくれなくて。

結局、後ろ髪を引かれる思いで、長い影を引きずりながら、母とトボトボ公園から帰っていたんだけど、そのとき茜色に染まった街の風景の中、道路の向こうのほうからヒロシくんがやってくるのが見えた。


嬉しかった♪


だけど、それはほんの一瞬だけ。

コッチに向かって歩いてくる彼の背中を…、

「ねぇ、待ってよ、ヒロシちゃ~ん♪」

…と言いながら追いかけてくる一人の女のコの姿が見えたからだ。

その女のコこそ、みさきちゃんだった。

あたしをさんざん待ちぼうけさせながら、彼はあたしとの約束なんてスッカリ忘れて、みさきちゃんと遊んでいたのだ。

アイツはあたしの愛を裏切ったんだ!
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