熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
「あの…遅刻するかと思って…それで走ってきたんですっ……」
「へぇ、クラスで一番のマジメちゃんが遅刻するなんて珍しいな」
“マジメちゃん”って。あたしがおとなしいから、そーいうふうに見えるってコト? それより今朝も機嫌が良さそうでよかった♪
「あの…途中で忘れ物したのに気がついて、家に取りに帰ってたから遅くなって……」
「フッ。マジメちゃんが、なんで遅刻するのかと思ったら、忘れ物を取りに帰ったっていう、やっぱりマジメな理由なんだな」
そういえば、彼が笑うのをはじめて見たような気がする。
そして彼が微笑みを見せたくれたおがけで、あたしはようやく一安心することができた。
「そうだ。写真できてるぞ。あとで学校に着いたら渡す」
「…!!」
学校じゃマズイんです、そう思ったあたしは慌てて言った。
「いま見たいですっ、写真っ」
「そんなに楽しみにしてたのか? ほら」
そう言って渡された写真には、魚住とと先生と満面の笑顔で握手して、うれし涙を流しているあたしの姿がうつっていた。