熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
他の人になら無理だと思う。だけど彼になら今まで誰にも読ませたことのないあたしの小説を読ませてあげてもいいかもしれない。

すでにあたしは心の扉を開いて、彼に心の中を見せはじめているんだから。

あたしの“いい顔してる写真”を撮って、本人さえ気がつかなかったような…、そんなところに気がついてくれる彼なら、きっと的確なアドバイスをしてくれるにちがいない。


「じゃあ、よろしくお願いします……」

あたしは彼にむかって深々と頭を下げた。

「だーかーら、その敬語はヤメロって。あと“比嘉”って呼ぶのも禁止。“航平”でいいよ、航平で」

「はい…」と言って、慌てて「うん…」と言い直した。

「じゃ、じゃあ……あたしの……ことも……“なぎさ”……って呼んで……ほしい……」

あたしは恥ずかしすぎて彼の顔を見ることもできずに、うつむいたまま、照れまくりながら、どうにか最後まで言うことができた。

「分かったよ、なぎさ」

「航平…くん、これから…よろしく…ね……」

明るく笑ったつもりだったけど、ぎこちないのが自分でも分かった。きっと、こんな作り笑顔じゃ、頬に“えくぼ”なんてできていないと思う。


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