熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
足取りもすごく軽くて、なんだか、まるで雲の上を歩いているようなフワフワした、今まで体験したことのない感覚があった。
せめて学校に着くまでのあいだだけでも一緒にいたいと思っていたはずなのに、気がつくと3年C組のある、3階へと続く階段を一緒に登っているあたしがいた。
ヤバイっ。そのとき、あたしは思った。
昨日、みさきちゃんに航平くんのことなんてナンとも思ってない、と言ったばかりなのに、もし一緒にいるところを見られたりしたら、アレがウソだとバレてしまう。
どうしよう、どうしよう、どうしよう…。
さっきまであんなに幸せいっぱいの気持ちだったのに、今はそのことも忘れ、思いっきり焦りまくっている。
「悪りぃ」
階段を登りきったところで彼が言った。
「え?」
「俺、トイレに寄ってくから」
ありがたいひとことだった。
「あ…。じゃあ、あたし、ひとりで教室に行くから」
「あぁ」