熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
「みさき、他の人なら許せないナルシストも、比嘉くんなら許せるよ♪ だって、カッコワルイ人がカッコつけても、全然サマにならないけど、カッコイイ人がカッコつけると、なんかもぅ~まさに、いわゆる一つの芸術作品ってカンジじゃん?」
おバカな彼女にしては実にナイスな表現の仕方だと思う。
「そうだよ、みさきの言うとおりだよ」
なみが言った。
「アンタにはジョージ先生がいるんだから、気に入らないんなら見なきゃいいじゃん」
「ふんっ、言われなくてもそうするわよ」
面白くなさそうにプイッと横を向く美帆。
それを聞きながらあたしは、うるさいな、静かにしてよ、と思った。黙って静かに芸術作品を鑑賞していたかったからだ。
歩く芸術作品――つまり、航平くんは今日も、オーシャン・ビュー・シートで、いかにもつまらなさそうに頬杖をついて、窓の向こうの海原を見ていた。
潮風にそよぐサラサラ前髪の下にのぞくまなざしは、涼しげというより、どこか冷めているような感じがしていた。
だけど、あたしは知っている、彼がそんなに冷たい人じゃないってことを。たぶん、あたししか知らないと思うけど――――――