熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
「でも、それでいいんじゃね?」

「え…?」

「だってケータイ小説なら最初にハナシ全体を完成させなくても、少しずつ書き足していけばいいんだろ?」

「うん……」

「もちろんケータイ小説でも冒頭のシーンは必要だけど、まだ『ケータイ小説大賞』の締め切りまで時間あるし、焦らないでやってみようぜ」

「うん…ありがとう……」

彼のことばが、軽く凹みそうになっていたあたしに手を差し伸べてくれたみたいで、そのやさしさに救われた気がする。


「ところでさ」

「うん」

「俺んち、ケータイつながりにくくてイライラするから、どっかのカフェかなんかで、直接会って話さねぇ?」

「ええっ…!!」

彼からの何でもなさそうな提案に、あたしはひどく動揺してしまった。

「え、なに? どうかした?」

電話だから当然相手の表情は分からないけど、きっと今この瞬間、彼は不思議そうな顔をしているんじゃないかと思う。
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