恋=結婚?
次の日の笑顔を顔に貼り付けてなんとか一日を過ごした。上野さんは少し困った表情で私を見ていた。困っているのは私なんだけれど。
「上野さん付き合ってる彼女いるみたいですよ」
「え?」
お昼の化粧室は香川さんが輝いている。
「なんか課長の見合い話を断ったらしいですよ。好きな人がいるからって」
「そうなんだ」
え? あれ? 上野さん、じゃあ私になんであんなことしたの?
「誰なんでしょうね? 会社の人かな?」
「さ、さあ?」
え? え?
「本当、興味なさそうですね。和泉さんっていつも」
「そんなことないよお」
そんなことない。興味はいつも以上だよ。
「秘書課の誰かですかね?」
「そうだね」
上野さん、何かの気の迷いだよね。きっと。「つい」とかって言ってたしね。
*
今日はどうするんだろう。智也の口ぶりだと毎日料理してって言う感じの言い方だったよね?
智也は黙々と仕事をこなしている。どうするんだろう?
*
仕事が終わり更衣室で着替えてから携帯をチェックしてみた。メールが一件。智也からだった。
「現地集合?」
「どうしたんです? 旅行ですか?」
思わず声が出ていた。その声は香川さんに聞こえてたようだった。
「あーその。妹がね。誘ってきたのよ」
苦しい言い訳だけどこれ以上の言い訳なんて思いつかない。
「そーなんですかあ」
香川さんは妹と聞いて興味をなくしたようだった。
智也……家で待ってるって……なんかさみしいんですけど。また二人で会えるのは嬉しいし、会社から近いし、一緒に歩いてたらすぐに噂になるんだけど……やっぱりさみしいよお。
「じゃあ、お先に失礼します」
「お疲れ様」
香川さんは今日もキメキメで帰って行った。
私も一応考え抜いた服装をしてきた。キメキメにならない程度の服装を。
会社を出て智也のマンションを目指す。本当に近い。近い職場を選んだのかな? たまたまかな?
途中で今夜の夕食の材料を買い込む。
一階の入り口でインターフォンを鳴らす。
「梨央奈。どうぞ」
「はい」
インターフォンについているカメラで確認したんだろう、すぐに自動ドアが開く。
中に入ってエレベーターまで歩いて行く。エレベーターは一階に着いていたのでボタンを押したらすぐに扉が開いた。エレベーターに乗り込む。
こういうのを付き合ってるって言うんじゃないの?……違うのかなあ。
経験の乏しさからこれがどんな関係なのかなんて自信持って言えない私。ずっと不安と期待の間で心が揺れ動いている。
チンと智也の部屋の階まできてしまった。
あーもー、どうするの私? このままなの?
智也の部屋の前で立ち止まりインターフォンに手を伸ばす。
ピンポーン
のんきなインターフォンの音とともに
ガチャっと智也が玄関を開けた。
「ごめんね。一人で買い物させちゃって」
「え? いいよお。それは別に」
本当は寂しかったくせに無理をする私。
「それは?」
「あ、ううん。違う。気にしないでいいよ」
つい、ぽろっと本当の気持ちが出てしまっちゃったよ。買い物はいいんだけどって心の声が出てしまった。
「じゃあ、作るね」
「手伝おうか?」
「それはまた今度ね」
器用な智也のことだ。私を手伝っているうちに料理の腕前を追い抜かされそうだしね。
気になるのか料理に興味があるからなのか智也はずっとそばにいる。
料理がテーブルに並ぶまで、私の動作を見つめている。何か気になっているんだろうか?
「じゃあ、食べよう」
「ああ、いただきます」
「いただきます」
食後の食器洗いは一人でするつもりみたいで自分の分はもう洗い始めている。食べ終わり食器をシンクに持っていくと
「洗うから置いといて」と軽く言われた。
「うん。じゃあお願い」
ソファーに腰かけ智也の仕事が終わるのを待っていた。
「梨央奈、終わったよ」
「ありがとう」
「アイス買ってきてたんだ。食べる?」
「いる! いる! なんのアイス?」
子供のような食いつき方だよね。食後の時間を少しでも長く一緒にいれたらいいなと願っている。
アイスを頬張りたわいもない会話を繰り広げる、こんなちょっとした毎日の積み重ねが思い出になって行くんだよね。
帰りは駅まで送ってくれる。
「じゃあ、明日から毎日だからね!」
「それ、本当に本当?」
「梨央奈、嫌なの?」
智也は捨てられた子犬のような目線を私に向ける。
「嫌じゃなないよ。毎日私の手料理でいいのか気になっただけ」
「うん。梨央奈の料理好きだよ」
「あ、うん。ありがとう」
こんなストレートに褒められることなんて……どれくらいぶりだろう。
「気をつけてね」
「うん」
こうして、毎日の夕食を作り一緒に食べる日々がはじまった。
木曜日の食事の間に智也が少し言いにくそうに言った。
「明日から泊まりに来る用意も持って来たら......どうかなって」
「え? あ、うん、そうだね」
その日別れて家に帰ってからは明日持っていくお泊まりの準備が始まる。いきなり大掛かりなお泊りセットだと痛いよね。
金曜日は何事もなく過ぎ去っていった。仕事が終わりお泊りセットを持ったまま買い物に来ている。
マンションに入り料理を始める。智也は相変わらず私の手料理の様子をみている。
テーブルに料理が並び智也と二人で食べる。今日がいつもと違うのはこの後私が駅に向かうことなしにこの部屋に泊まるって言うことだろう。
智也の食器洗いが終わり、いつもなら少ししてから帰るところなのに。
ソファーで座って待っていた私のもとに食器洗いを終えた智也がやって来た。
智也は私の真横に座る。
「梨央奈」
ジッと私を見つめる智也の目の色がさっきと違う。ん? どうしたんだろう。
肩を抱き寄せられて唇を
キスだけで素直になる身体も心も。
恋しくて愛おしいにのどうして離れてしまうんだろう。ずっと身体もココロもつながっていれたらいいのに。
「上野さん付き合ってる彼女いるみたいですよ」
「え?」
お昼の化粧室は香川さんが輝いている。
「なんか課長の見合い話を断ったらしいですよ。好きな人がいるからって」
「そうなんだ」
え? あれ? 上野さん、じゃあ私になんであんなことしたの?
「誰なんでしょうね? 会社の人かな?」
「さ、さあ?」
え? え?
「本当、興味なさそうですね。和泉さんっていつも」
「そんなことないよお」
そんなことない。興味はいつも以上だよ。
「秘書課の誰かですかね?」
「そうだね」
上野さん、何かの気の迷いだよね。きっと。「つい」とかって言ってたしね。
*
今日はどうするんだろう。智也の口ぶりだと毎日料理してって言う感じの言い方だったよね?
智也は黙々と仕事をこなしている。どうするんだろう?
*
仕事が終わり更衣室で着替えてから携帯をチェックしてみた。メールが一件。智也からだった。
「現地集合?」
「どうしたんです? 旅行ですか?」
思わず声が出ていた。その声は香川さんに聞こえてたようだった。
「あーその。妹がね。誘ってきたのよ」
苦しい言い訳だけどこれ以上の言い訳なんて思いつかない。
「そーなんですかあ」
香川さんは妹と聞いて興味をなくしたようだった。
智也……家で待ってるって……なんかさみしいんですけど。また二人で会えるのは嬉しいし、会社から近いし、一緒に歩いてたらすぐに噂になるんだけど……やっぱりさみしいよお。
「じゃあ、お先に失礼します」
「お疲れ様」
香川さんは今日もキメキメで帰って行った。
私も一応考え抜いた服装をしてきた。キメキメにならない程度の服装を。
会社を出て智也のマンションを目指す。本当に近い。近い職場を選んだのかな? たまたまかな?
途中で今夜の夕食の材料を買い込む。
一階の入り口でインターフォンを鳴らす。
「梨央奈。どうぞ」
「はい」
インターフォンについているカメラで確認したんだろう、すぐに自動ドアが開く。
中に入ってエレベーターまで歩いて行く。エレベーターは一階に着いていたのでボタンを押したらすぐに扉が開いた。エレベーターに乗り込む。
こういうのを付き合ってるって言うんじゃないの?……違うのかなあ。
経験の乏しさからこれがどんな関係なのかなんて自信持って言えない私。ずっと不安と期待の間で心が揺れ動いている。
チンと智也の部屋の階まできてしまった。
あーもー、どうするの私? このままなの?
智也の部屋の前で立ち止まりインターフォンに手を伸ばす。
ピンポーン
のんきなインターフォンの音とともに
ガチャっと智也が玄関を開けた。
「ごめんね。一人で買い物させちゃって」
「え? いいよお。それは別に」
本当は寂しかったくせに無理をする私。
「それは?」
「あ、ううん。違う。気にしないでいいよ」
つい、ぽろっと本当の気持ちが出てしまっちゃったよ。買い物はいいんだけどって心の声が出てしまった。
「じゃあ、作るね」
「手伝おうか?」
「それはまた今度ね」
器用な智也のことだ。私を手伝っているうちに料理の腕前を追い抜かされそうだしね。
気になるのか料理に興味があるからなのか智也はずっとそばにいる。
料理がテーブルに並ぶまで、私の動作を見つめている。何か気になっているんだろうか?
「じゃあ、食べよう」
「ああ、いただきます」
「いただきます」
食後の食器洗いは一人でするつもりみたいで自分の分はもう洗い始めている。食べ終わり食器をシンクに持っていくと
「洗うから置いといて」と軽く言われた。
「うん。じゃあお願い」
ソファーに腰かけ智也の仕事が終わるのを待っていた。
「梨央奈、終わったよ」
「ありがとう」
「アイス買ってきてたんだ。食べる?」
「いる! いる! なんのアイス?」
子供のような食いつき方だよね。食後の時間を少しでも長く一緒にいれたらいいなと願っている。
アイスを頬張りたわいもない会話を繰り広げる、こんなちょっとした毎日の積み重ねが思い出になって行くんだよね。
帰りは駅まで送ってくれる。
「じゃあ、明日から毎日だからね!」
「それ、本当に本当?」
「梨央奈、嫌なの?」
智也は捨てられた子犬のような目線を私に向ける。
「嫌じゃなないよ。毎日私の手料理でいいのか気になっただけ」
「うん。梨央奈の料理好きだよ」
「あ、うん。ありがとう」
こんなストレートに褒められることなんて……どれくらいぶりだろう。
「気をつけてね」
「うん」
こうして、毎日の夕食を作り一緒に食べる日々がはじまった。
木曜日の食事の間に智也が少し言いにくそうに言った。
「明日から泊まりに来る用意も持って来たら......どうかなって」
「え? あ、うん、そうだね」
その日別れて家に帰ってからは明日持っていくお泊まりの準備が始まる。いきなり大掛かりなお泊りセットだと痛いよね。
金曜日は何事もなく過ぎ去っていった。仕事が終わりお泊りセットを持ったまま買い物に来ている。
マンションに入り料理を始める。智也は相変わらず私の手料理の様子をみている。
テーブルに料理が並び智也と二人で食べる。今日がいつもと違うのはこの後私が駅に向かうことなしにこの部屋に泊まるって言うことだろう。
智也の食器洗いが終わり、いつもなら少ししてから帰るところなのに。
ソファーで座って待っていた私のもとに食器洗いを終えた智也がやって来た。
智也は私の真横に座る。
「梨央奈」
ジッと私を見つめる智也の目の色がさっきと違う。ん? どうしたんだろう。
肩を抱き寄せられて唇を
キスだけで素直になる身体も心も。
恋しくて愛おしいにのどうして離れてしまうんだろう。ずっと身体もココロもつながっていれたらいいのに。