恋=結婚?
「もう! 来るなら連絡してよ!」
「お前が帰ってくるとばかり思ってたんだぞ! それを急に今年は帰らないとか言い出して。だからわざわざ来たのに……なんだその言い草は!」
「わかった。それは悪かったわよ。でも、見合いって……そんな急に言われても」
「急じゃない。半年以上前の正月にちゃんと言ったぞ」
言ったけど……その時は智也に出会ってすらいなかったし……それに、来年のお正月にって話だとばかり思っていたのに。
「そ、そうだけど……」
「ま、とりあえず飯でも、な、な」
何か急に態度が軟化したんだけどどういう風の吹きまわし?
その風はファミレスのご飯を食べたらおさまるどころではなかった。さらに強く吹き荒れた。
「え? 服? 要らないわよ。持ってるんだから」
「お前そんな服ばっかり着てるから彼氏も出来ないんだ。紗子が言ってたぞ」
紗子とはもう嫁に行ってしまった二つ下の妹のこと。紗子余計なこと言わないでよ? って言うかお父さんが服買ってくれるのって見合いの為じゃない? い、いつなの? 服ってことはお正月じゃないよね。どう考えても半袖の夏服しか売ってないだろうし。見合いっていつなの?
百貨店の中にある高級そうな服を前に困り果てる私。買ってもらって行かないわけにはいかなくなるじゃない! なんだかんだと文句をつけて買わないで過ごす。父も自分のチョイスには自信がないんだろう、店の人が勧めるままに私に着せようとする。やっぱりお見合いの服じゃない。
紗子の言ってた彼氏が出来ない服装発言に傷ついていた私の心は少し回復する。まあ、紗子は本音を言ったんだろうけど……服買い直そうかな。智也気にしてるのかな? 智也って何気にオシャレだし。気にしてる? でも、一緒に出かけても気にしないよね? ああ、目の前のきらびやかな服を見ていると私のクローゼットの地味な服がチラつく。ここまでじゃないけど……もっと洋服にお金をかけた方がいいのかな……。
私の悩みは別の場所に心を移してしまっていた。
その間に父は何やら店員さんと密談。パシャっと音が聞こえたかと思うと何やらメールを送っているみたい。父ってメールしかも写メまで送れるんだと感心していたら、どうやら返事がきたみたいだった。
「梨央奈! これいいぞ!!」
「誰に確認とったのよ!?」
「紗子だよ」
やっぱりね。って、紗子暇なの? あ、今実家にいるんだ。だから、お見合いの話も聞いているんだ。
「いいよお!」
「一回着てからだ」
「えー! もう!」
この年になって父と買い物、しかも服を買うことになろうとは……。それにしても服選びに紗子を待機させておくなんて……今日中に買わせる気だな。今日は帰ってくれそうだ。いろんな物を智也の家においてきたので、父に泊まるとか言われたらどうしようかと思った。まあ、布団もないから拒否できるけどあまり長い時間家に父がいたらさすがに物がないことに気づかれそうだったし。さっさと買って済ませようかな。あ、でも家に入られても困る。
というわけで趣味じゃないとか、若過ぎるとか、紗子の趣味をことごとく否定して回る。それにしても服の写真よく撮らせてもらえるよね。ま、まさか見合いがどうのとか言ってるんだろうか。は、恥ずかしいんだけど。でも、ここで折れるわけにはいかない!
「あ! コレ!!」
そう思っていたのに思わず可愛いワンピースの前で立ち止まってしまった。店員さんが勧め父が選び紗子のゴーサインがでる服はやっぱり紗子の好みだし全体的に派手だった。私の好みではなかったから拒否しやすかったんだけど、思わず自分好みの服を前に反応してしまった。私も女なのよね……やっぱり。
「コレかあ。まあ、少し地味だが梨央奈の歳を……」
「なに?」
「いや、いい。着てみたらどうだ。な!」
どうせ二十九ですよーだ! 紗子の選ぶ服とは違います!
試着室に入り着替える。うわ! こんなワンピース着たのいつだろう? 女子大の卒業パーティーの時じゃない? ああ、智也に見せたいなあ。で、でも、恥ずかしい。家で着るものじゃないし……やっぱり見合い用だね。
「梨央奈! まだか!!」
もう! なんでお父さんなのよ!
シャッとカーテンを開けるとそこには携帯を構えた父がいる。えー! 紗子に確認するの? また何を言われるか……。
パシャと写メを送る父に店員さんが「よくお似合いですよお!」と営業スマイルを輝かせる。
返事がきた。紗子スタン張りすぎ。
「おー。じゃあコレください」
どうやら紗子のゴーサインがでたようだった。もうやけっぱちじゃない? 紗子の面倒くさそうな様子が目に浮かぶ。
そのついでのように靴も購入。
「持ってるってば」
という私の言葉は、紗子の「お姉ちゃんの言う事はあてにならい」という言葉で打ち砕かれた。
「ね、ね、ちょっと休まない? 疲れたし」
「おーそうか。じゃあ、行こう」
やけに素直な父。そして、なぜか携帯でお店を探している。何時の間にそんな携帯を使える五十代になってるの? 紗子か……次は何を仕込んだの? 携帯で探し出したお店の中に入って行く父。
「え? 休憩じゃないじゃない!」
「どうせ座ってるだけだろう? 休憩と変わらない」
「お前が帰ってくるとばかり思ってたんだぞ! それを急に今年は帰らないとか言い出して。だからわざわざ来たのに……なんだその言い草は!」
「わかった。それは悪かったわよ。でも、見合いって……そんな急に言われても」
「急じゃない。半年以上前の正月にちゃんと言ったぞ」
言ったけど……その時は智也に出会ってすらいなかったし……それに、来年のお正月にって話だとばかり思っていたのに。
「そ、そうだけど……」
「ま、とりあえず飯でも、な、な」
何か急に態度が軟化したんだけどどういう風の吹きまわし?
その風はファミレスのご飯を食べたらおさまるどころではなかった。さらに強く吹き荒れた。
「え? 服? 要らないわよ。持ってるんだから」
「お前そんな服ばっかり着てるから彼氏も出来ないんだ。紗子が言ってたぞ」
紗子とはもう嫁に行ってしまった二つ下の妹のこと。紗子余計なこと言わないでよ? って言うかお父さんが服買ってくれるのって見合いの為じゃない? い、いつなの? 服ってことはお正月じゃないよね。どう考えても半袖の夏服しか売ってないだろうし。見合いっていつなの?
百貨店の中にある高級そうな服を前に困り果てる私。買ってもらって行かないわけにはいかなくなるじゃない! なんだかんだと文句をつけて買わないで過ごす。父も自分のチョイスには自信がないんだろう、店の人が勧めるままに私に着せようとする。やっぱりお見合いの服じゃない。
紗子の言ってた彼氏が出来ない服装発言に傷ついていた私の心は少し回復する。まあ、紗子は本音を言ったんだろうけど……服買い直そうかな。智也気にしてるのかな? 智也って何気にオシャレだし。気にしてる? でも、一緒に出かけても気にしないよね? ああ、目の前のきらびやかな服を見ていると私のクローゼットの地味な服がチラつく。ここまでじゃないけど……もっと洋服にお金をかけた方がいいのかな……。
私の悩みは別の場所に心を移してしまっていた。
その間に父は何やら店員さんと密談。パシャっと音が聞こえたかと思うと何やらメールを送っているみたい。父ってメールしかも写メまで送れるんだと感心していたら、どうやら返事がきたみたいだった。
「梨央奈! これいいぞ!!」
「誰に確認とったのよ!?」
「紗子だよ」
やっぱりね。って、紗子暇なの? あ、今実家にいるんだ。だから、お見合いの話も聞いているんだ。
「いいよお!」
「一回着てからだ」
「えー! もう!」
この年になって父と買い物、しかも服を買うことになろうとは……。それにしても服選びに紗子を待機させておくなんて……今日中に買わせる気だな。今日は帰ってくれそうだ。いろんな物を智也の家においてきたので、父に泊まるとか言われたらどうしようかと思った。まあ、布団もないから拒否できるけどあまり長い時間家に父がいたらさすがに物がないことに気づかれそうだったし。さっさと買って済ませようかな。あ、でも家に入られても困る。
というわけで趣味じゃないとか、若過ぎるとか、紗子の趣味をことごとく否定して回る。それにしても服の写真よく撮らせてもらえるよね。ま、まさか見合いがどうのとか言ってるんだろうか。は、恥ずかしいんだけど。でも、ここで折れるわけにはいかない!
「あ! コレ!!」
そう思っていたのに思わず可愛いワンピースの前で立ち止まってしまった。店員さんが勧め父が選び紗子のゴーサインがでる服はやっぱり紗子の好みだし全体的に派手だった。私の好みではなかったから拒否しやすかったんだけど、思わず自分好みの服を前に反応してしまった。私も女なのよね……やっぱり。
「コレかあ。まあ、少し地味だが梨央奈の歳を……」
「なに?」
「いや、いい。着てみたらどうだ。な!」
どうせ二十九ですよーだ! 紗子の選ぶ服とは違います!
試着室に入り着替える。うわ! こんなワンピース着たのいつだろう? 女子大の卒業パーティーの時じゃない? ああ、智也に見せたいなあ。で、でも、恥ずかしい。家で着るものじゃないし……やっぱり見合い用だね。
「梨央奈! まだか!!」
もう! なんでお父さんなのよ!
シャッとカーテンを開けるとそこには携帯を構えた父がいる。えー! 紗子に確認するの? また何を言われるか……。
パシャと写メを送る父に店員さんが「よくお似合いですよお!」と営業スマイルを輝かせる。
返事がきた。紗子スタン張りすぎ。
「おー。じゃあコレください」
どうやら紗子のゴーサインがでたようだった。もうやけっぱちじゃない? 紗子の面倒くさそうな様子が目に浮かぶ。
そのついでのように靴も購入。
「持ってるってば」
という私の言葉は、紗子の「お姉ちゃんの言う事はあてにならい」という言葉で打ち砕かれた。
「ね、ね、ちょっと休まない? 疲れたし」
「おーそうか。じゃあ、行こう」
やけに素直な父。そして、なぜか携帯でお店を探している。何時の間にそんな携帯を使える五十代になってるの? 紗子か……次は何を仕込んだの? 携帯で探し出したお店の中に入って行く父。
「え? 休憩じゃないじゃない!」
「どうせ座ってるだけだろう? 休憩と変わらない」