恋=結婚?
家に着いた頃にはもうヘトヘトだった。でも、ここで頑張らないと。また話がややこしくなってしまう。
とりあえずいわれるがままに着替えた。靴もはき直した。ここまで変わると気分も変わってくる。
ああ、智也に逢いたい。智也に見てもらいたい。どうしてこんな格好してるかなんてお見合い以外の理由なんて思いつかないけれど。
「じゃあ、行くぞ!」
「あ、うん」
「それにしてもお前はどんな生活してるんだ。物が少なくないか?」
「そ、そうかな? 休みに大掃除したからかなあ」
してもいない大掃除を理由に智也の部屋において来てしまった物たちのいいわけをしてみる。
父は時間がないからと電車は諦めてタクシーにした。どれだけ今回の見合いにかけているんだろう。だんだんと不安になる。
「ねえ、どんな人なの?」
拒否する前に知っておいた方がいいだろう。
「ん? ああ、そうだったな」
お父さん? 今の感じだと完全にそのこと忘れてたよね? 私を見合い相手に会わせるのに必死で。
「これこれ、これだよ」
父は携帯を取り出して画面を私に見せる。また携帯ですか? 活用しまくりだね。
そんなことはまあいいや、それよりも相手の事!
父のメールの受信箱にあったのはお見合い相手のプロフィール一とニだった。一には相手のプロフィールがざっくりと書かれている。プロフィール二には写真が添付しているようだった。一のプロフィールを見てみる……なにこれ? アラなどどこにもなかった。三十二才という年齢も男ならば何の問題もない。むしろ私の年齢からなら好都合な年齢だった。そして、職業も文句はない企業だし……ただ海外勤務が多いのが気になるところと言ったぐらいだった。あとは……写真。ここまで好条件だったんだ、きっとここにアラがあるんだろう。断わると思って写真を見てみるけれどそれでもなんだか緊張する。どんな人だろう……。添付されたファイルを見てみる。う、……嘘。嘘だよね?
そこに写っていたのは紛れもない好青年だった。おばさんがほめる類の人ではなくて、香川さんが騒いで噂をするようなタイプ。な、なんかの間違い? なんで見合いするのよ? 必要ないでしょ? あ、ああ、性格上の問題で、か。もうそれしか考えられない。タクシーの中で一人驚き一人納得する私。
「聡さんなあ。海外勤務が多いんで彼女が出来ても長続き出来なかくてなかなか縁談まで話がまとまらなかったそうなんだ」
な、なるほど、この経歴でこの顔で彼女なしはあり得ないよね。性格を疑ってなんだか申し訳ない思いになる私。
「今回の帰国は少し長くて半年は日本にいるそうだ。半年もあれば結婚まで十分だろう?」
「半年?」
え? 半年で私を結婚させるつもりなの? 父はどこまで三十になるまでに私を結婚させたいんだろう。
「お前も一年たたない内に三十だぞ」
「わ、わかってるわよ」
わかってるわよ……。そんなこと改めて言われなくたってわかってる。智也がついこの前まで学生だったことも、まだその気分の抜けない派遣だってことも、そして……私達の関係が……ただの……グッと胸が詰まる。私は認めたくないのかもしれない。自分の年を自分がおかれている立場を。でも、夢に見たいんだ。もしかしたら、智也は……と。儚い夢なのにね。
こうしていい条件のお見合い話が来るなんて思ってもみなかった。分相応な話が来るんだろうと思っていた。お見合いなんて簡単な話だと。なのに……断れないかもしれないと怯えている私がいる。もうこんな話なんてきっと来ないだろう。智也とどうにかなるなんてことはない。私はどこかで他の誰かを選ばなければいけない。こんな絶好な話を断ってもいいんだろうか? 心は迷いでいっぱいになる。
この先これ以上の話なんてきっとこないだろう。今回断れば余計に話が来ないかもしれない。……私はどうしたいの? 服を買ってもらった手前、父に無理矢理連れられて来ているという話があるけれど嫌なら断れたはずだった。なのにこうやってタクシーの中にワンピースを着て大人しく相手のプロフィールを確認している私がいたりする。心のどこかではお見合いして結婚しなければと思っているのかもしれない。
タクシーは静かにどこかのホテルの前に停まった。父はお金を払って車を降りる。私も黙って続く。
「じゃあ、ここのホテルのレストランで待ち合わせだらかな」
「え?」
父は私にそう言ってそのまま立ち去ろうとしいている。
「ちょ! ちょっと待って! 私一人で行くの?」
ここまでついてきたのに。しかも、わざわざここまで出て来たのに……もう帰るの?
「お前なあ。子供じゃないんだぞ。俺が行ってどうするんだ?」
「そ、そうだけど……」
確かにそうなんだけど! どうしたらいいのよ? 知らない人だよ?
心にあった不安がドンドンと大きくなる。
「会って挨拶して食事するくらいできるだろう? 最上階のレストランだ。間が持たないなら酒でも飲んどけ」
そ、そんな投げやりな……。
「あの、お父さん?」
「じゃあ、な。上手くやるんだぞ」
父はそう言って後ろ手に手を振って去って行った。う、嘘! 本当に一人なの?
とりあえずいわれるがままに着替えた。靴もはき直した。ここまで変わると気分も変わってくる。
ああ、智也に逢いたい。智也に見てもらいたい。どうしてこんな格好してるかなんてお見合い以外の理由なんて思いつかないけれど。
「じゃあ、行くぞ!」
「あ、うん」
「それにしてもお前はどんな生活してるんだ。物が少なくないか?」
「そ、そうかな? 休みに大掃除したからかなあ」
してもいない大掃除を理由に智也の部屋において来てしまった物たちのいいわけをしてみる。
父は時間がないからと電車は諦めてタクシーにした。どれだけ今回の見合いにかけているんだろう。だんだんと不安になる。
「ねえ、どんな人なの?」
拒否する前に知っておいた方がいいだろう。
「ん? ああ、そうだったな」
お父さん? 今の感じだと完全にそのこと忘れてたよね? 私を見合い相手に会わせるのに必死で。
「これこれ、これだよ」
父は携帯を取り出して画面を私に見せる。また携帯ですか? 活用しまくりだね。
そんなことはまあいいや、それよりも相手の事!
父のメールの受信箱にあったのはお見合い相手のプロフィール一とニだった。一には相手のプロフィールがざっくりと書かれている。プロフィール二には写真が添付しているようだった。一のプロフィールを見てみる……なにこれ? アラなどどこにもなかった。三十二才という年齢も男ならば何の問題もない。むしろ私の年齢からなら好都合な年齢だった。そして、職業も文句はない企業だし……ただ海外勤務が多いのが気になるところと言ったぐらいだった。あとは……写真。ここまで好条件だったんだ、きっとここにアラがあるんだろう。断わると思って写真を見てみるけれどそれでもなんだか緊張する。どんな人だろう……。添付されたファイルを見てみる。う、……嘘。嘘だよね?
そこに写っていたのは紛れもない好青年だった。おばさんがほめる類の人ではなくて、香川さんが騒いで噂をするようなタイプ。な、なんかの間違い? なんで見合いするのよ? 必要ないでしょ? あ、ああ、性格上の問題で、か。もうそれしか考えられない。タクシーの中で一人驚き一人納得する私。
「聡さんなあ。海外勤務が多いんで彼女が出来ても長続き出来なかくてなかなか縁談まで話がまとまらなかったそうなんだ」
な、なるほど、この経歴でこの顔で彼女なしはあり得ないよね。性格を疑ってなんだか申し訳ない思いになる私。
「今回の帰国は少し長くて半年は日本にいるそうだ。半年もあれば結婚まで十分だろう?」
「半年?」
え? 半年で私を結婚させるつもりなの? 父はどこまで三十になるまでに私を結婚させたいんだろう。
「お前も一年たたない内に三十だぞ」
「わ、わかってるわよ」
わかってるわよ……。そんなこと改めて言われなくたってわかってる。智也がついこの前まで学生だったことも、まだその気分の抜けない派遣だってことも、そして……私達の関係が……ただの……グッと胸が詰まる。私は認めたくないのかもしれない。自分の年を自分がおかれている立場を。でも、夢に見たいんだ。もしかしたら、智也は……と。儚い夢なのにね。
こうしていい条件のお見合い話が来るなんて思ってもみなかった。分相応な話が来るんだろうと思っていた。お見合いなんて簡単な話だと。なのに……断れないかもしれないと怯えている私がいる。もうこんな話なんてきっと来ないだろう。智也とどうにかなるなんてことはない。私はどこかで他の誰かを選ばなければいけない。こんな絶好な話を断ってもいいんだろうか? 心は迷いでいっぱいになる。
この先これ以上の話なんてきっとこないだろう。今回断れば余計に話が来ないかもしれない。……私はどうしたいの? 服を買ってもらった手前、父に無理矢理連れられて来ているという話があるけれど嫌なら断れたはずだった。なのにこうやってタクシーの中にワンピースを着て大人しく相手のプロフィールを確認している私がいたりする。心のどこかではお見合いして結婚しなければと思っているのかもしれない。
タクシーは静かにどこかのホテルの前に停まった。父はお金を払って車を降りる。私も黙って続く。
「じゃあ、ここのホテルのレストランで待ち合わせだらかな」
「え?」
父は私にそう言ってそのまま立ち去ろうとしいている。
「ちょ! ちょっと待って! 私一人で行くの?」
ここまでついてきたのに。しかも、わざわざここまで出て来たのに……もう帰るの?
「お前なあ。子供じゃないんだぞ。俺が行ってどうするんだ?」
「そ、そうだけど……」
確かにそうなんだけど! どうしたらいいのよ? 知らない人だよ?
心にあった不安がドンドンと大きくなる。
「会って挨拶して食事するくらいできるだろう? 最上階のレストランだ。間が持たないなら酒でも飲んどけ」
そ、そんな投げやりな……。
「あの、お父さん?」
「じゃあ、な。上手くやるんだぞ」
父はそう言って後ろ手に手を振って去って行った。う、嘘! 本当に一人なの?