相良くんはなびかない



クッキーの甘い香りが鼻孔をくすぐる。

といっても、まだ焼く前なんだけどね!



「上手くできるいいね〜」



オーブンを予熱している間に美嘉にそう言うと、美嘉は「そうね」と言った。



「鈴菜が料理だけは得意で助かった」

「料理だけは、って、他にも出来ることの1つや2つくらいあるよ!」



勉強できないし、運動も苦手だけど!

苦手の方が多いかもだけど!



「そんな拗ねた顔しないでって」

「だって〜!」



ぷう、と頬を膨らます。

美嘉は困った顔をしたかと思ったら笑った。



「風船みたい」



美嘉が私の頬をつついた。


ふざけないでよ〜、

そう言おうと思ったけど、先に言葉を口に出したのは美嘉だった。



「今日は手伝ってくれてありがとうね」

「えっ、う、うん!」



美嘉からお礼言われたの初めてかもしれない。

今まで助けてもらったことの方多かったし…!



チーン。



ちょうど予熱が終わったみたいだった。


< 19 / 19 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop