相良くんはなびかない
クッキーの甘い香りが鼻孔をくすぐる。
といっても、まだ焼く前なんだけどね!
「上手くできるいいね〜」
オーブンを予熱している間に美嘉にそう言うと、美嘉は「そうね」と言った。
「鈴菜が料理だけは得意で助かった」
「料理だけは、って、他にも出来ることの1つや2つくらいあるよ!」
勉強できないし、運動も苦手だけど!
苦手の方が多いかもだけど!
「そんな拗ねた顔しないでって」
「だって〜!」
ぷう、と頬を膨らます。
美嘉は困った顔をしたかと思ったら笑った。
「風船みたい」
美嘉が私の頬をつついた。
ふざけないでよ〜、
そう言おうと思ったけど、先に言葉を口に出したのは美嘉だった。
「今日は手伝ってくれてありがとうね」
「えっ、う、うん!」
美嘉からお礼言われたの初めてかもしれない。
今まで助けてもらったことの方多かったし…!
チーン。
ちょうど予熱が終わったみたいだった。