アイ・ミス・ユー
嫌じゃないから、手を繋ぐ。
嫌じゃないから、振りほどかない。
それだけの理由で、私たちは手を繋いでいる。
徐々にお互いの手のひらに熱がこもり出して、しっとり汗をかいてきた。
「あの、私……手汗がヤバいんですが」
自己申告は忘れずに。
恥ずかしいからなのか暑いからなのか、理由の分からない汗が首筋を伝う。
それと同じくらい、手からも緊張が漂っていた。
「俺も手汗ヤバいです。だってすごくドキドキしてるから」
「ねぇ、変なこと言うのやめて」
「そっちは手繋いでもドキドキしないの?」
この状況でよく笑っていられるな、と感心するほど彼は微笑んでいる。
ドキドキしてるのが本当かどうか問いただしたいくらいに。
この年でこんな気持ちになるとは思ってもみなかった。
心臓の鼓動の速さが、増していく。
これは、なんだろう。
「ドキドキ……してるよ。不思議系男子が相手なのにね」
皮肉混じりにボソボソと答えると、彼の満足そうな笑顔が見えた。
「そう。それは良かった。………………ほらね、素直になれた。だから大丈夫」
なんだか、悔しいけれど。
意外と金子は私よりも数枚上手なんじゃないかと思い始めていた。
不思議とこの人の前では嘘がつけない気がした。