アイ・ミス・ユー


金子が元々は喫煙者だったことに意外性を感じたものの、まぁそんなに珍しいことでもないので「へぇ」と返す。


「よくやめられたね。キッカケは?」

「ん?うーん、いや……」


歯切れの悪い答えが返ってきたので、私の女のカンというべきか、妙な第六感が働いた。


「あー、まさか、付き合ってた彼女に禁煙してって頼まれたパターン?」

「…………………………お察しの通り」

「ふぅ〜ん」


運転しながら金子が挙動不審になるのを見て、密かに面白がってしまった。
あぁ、この人ってこういう話題は苦手なんだ。


「別に隠すことじゃないよ。この歳だもの、恋人がいなかったって方が不自然でしょ」

「まぁ、そうだけど」


真面目な金子らしいエピソードだと思った。
彼女に禁煙をお願いされて、健気に気合いでやめた姿が容易に想像出来てしまう。


私が健也という彼氏がいたように、彼にもそういう人はいたわけで。
それはごくごく自然なことなのだ。


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