アイ・ミス・ユー
開店前の店舗では毎朝、販売促進部と販売部で簡単なミーティングが行われる。
おそらく一般的には朝礼ってやつだろうか。
私たちはミーティングと呼ぶ。
前日の部門別の売上報告・反省、お客様からのお声、今日の売上目標、今月の売上目標達成率、……まだまだ内容はあるけれど、本店の広い売り場をそれぞれ受け持つ社員たちが一同に集まり、話し合う。
私の隣には大きなあくびをしている翡翠ちゃんがいて、眠そうな顔に涙目がプラスされて気だるさMAXだ。
いつもの血色メイクとかいう化粧が、だんだんと彼女のトレードマークになりつつある。
彼女につられて私まであくびしそうになり、必死に噛み殺した。
開店30分前、ミーティングのために社員が集まると、販促部の酒田部長が人の良さそうな笑顔を振りまきながらやって来た。
部長の後ろには、背の高い男がついてきている。
すぐに分かった。
今日からうちに異動してきた、金子基之であると。
「みんな、おはよう」
酒田部長が挨拶をすれば、「おはようございます」とその場にいる社員たちが挨拶を返した。
「ミーティングの前に、新しい主任が来てくれたので紹介させてくれ。みんな辞令が下ったのは知ってると思うけど、彼は退職された沢渡主任の後任で来てくれたんだ」
40代で部長になった酒田さんは、小柄で少しぽっちゃりしていて親しみやすい。優しさが顔からにじみ出ている、「みんなのお兄ちゃん」的な存在だ。
その酒田部長に促されて、金子が口を開いた。