アイ・ミス・ユー


夏の暑い日差しは夕方になっても収まる気配を見せず、西日となって痛いほどに肌に伝わってくる。


そこでようやく、金子に帽子をずっと借りっぱなしであったことを思い出した。
慌ててキャップを脱いで、自分の膝の上に乗せる。


「帽子、忘れてた。貸してくれてありがとう。おかげで顔だけは日焼けの死守に繋がったよ」

「それは良かった」

「腕なんか、もう真っ赤っか。日焼けするとどうしても黒くならずに赤くなっちゃうの。痛そうでしょ?」


ちょうど赤信号で停まったので、日焼けで赤くなった右腕を金子に見せた。
翡翠ちゃんみたいに頑なにテントの中にいれば良かったのかもしれないけれど。


この腕だとお風呂に入る時は悲鳴ものに違いない。


「ほんとだね」


金子の手が私の腕に触れる。
熱っぽい腕が、さらに熱くなった気がした。


「帰ったら少し冷やすといいよ」

「……うん。そうする」


うなずいたら、金子の手が離れて行った。


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