アイ・ミス・ユー
「綾川さんにはね、金子くんのサポートをしてもらいたいと思ってるんだ。要するに副主任ってことなんだけど。サブリーダーっていうのかな。正式な役職じゃなくて申し訳ないんだけどさ」
ミーティング後、酒田部長に連れてこられたのは本店店舗の上の階……すなわち本社と呼ばれるエリアの、いくつかある面談室のうちの一室。
そこに、部長と、私と、そして金子。
この状況は、なんなの?
混乱する頭をどうにか落ち着かせるように努力するけれど、パニック寸前まで追いやられている。
「え?え?サポート?副主任?サブリーダー?」
「うん、そう。サポート。副主任。サブリーダー」
忠実にそっくりそのままオウム返しした部長は、慌てている私を見て笑っていた。
「急な話で驚いたよね、ごめんね。でも前任の沢渡主任みたいに急病で退職……ってことになるとちょっと大変だから、サブが必要だなってことで上から話があって。検討した結果、綾川さんが適任かなーって判断したの」
「無理です!」
「無理じゃないよ、大丈夫」
「他に仕事が出来る人、いっぱいいるじゃないですか!ほら、内藤さんとか中村さんとかっ」
「ううん。綾川さんがいいと思ったの」
「いやでも……」
私のすぐ隣にいる金子にはなるべく視線を送らないようにつとめながら、酒田部長に食い下がる。
しかし部長も断固として私の意見は聞き入れない。
笑顔で押してくる。
「若い力で販促部を盛り立ててほしいんだ。だから頼むよ」