アイ・ミス・ユー
「私……婚活しないことにした」
あまり時間のないお昼休みに、お弁当をかきこみながら樹理に告げた。
高らかに宣言したから、一応それは消去しておかなければという思いからだ。
すると樹理はコンビニのパンにかぶりいたまま、至って普通に聞き返してきた。
「そう。てことは何?金子くんとうまくいったの?付き合うことになったの?」
再会してから彼との間に起こったことは、全くと言っていいほどほぼ何も話していないはずなのに。
この見透かされ感は悔しい。
「付き合ってませんがっ」
「なんだぁ。早く付き合っちゃいなよ」
「そんな簡単に言わないでよ」
休憩室の一角で、ワイワイガヤガヤと賑わう中で話しているので誰も私たちの会話なんて聞いていない。
それは分かってはいるけれど、万が一誰かに聞かれたら困るので自然と声は小さくなる。
「付き合うために何をすればいいのやら、もうよく分かんないのよ。健也との仲も誤解されちゃってるし」
「なにそのこじらせ具合。めんどくさっ」
バッサリと言い捨てた樹理は、言葉通りの面倒くさそうな物言いで小さく笑った。
「好きって言う。抱きつく。キスする。この歳になってまでそんなシンプルなことも分かんないの?」
「女の私から出来ないよっ」
「あっちは戦々恐々としてるのよ。キスしてビンタされた前科があるんだから。打開できるのは結子の積極性しかないでしょ」
まるで恋愛マスターのように言っているけれど、そんな樹理だって彼氏いない歴がけっこう長い。
それなのに諭される私って……。