アイ・ミス・ユー
明日のフェアに向けて、ある程度の残業は覚悟していたけれど。
23時を超えた時には、もう帰れないんじゃないかという不安にも襲われるほどだった。
販促部と販売部だけじゃなく他の部門も手伝ってくれて、なんとか日付を過ぎる前に会社をバタバタと退社することが出来た。
終電も間近で、息をつく暇もなく私と金子は自然に2人になり、そしてほぼダッシュで地下鉄のホームへと向かう。
明日だって早くから出社だし、終電を逃すことはあってはならない。
なので、終始無言で必死に走ったのだ。
すでにホームに着いていた地下鉄に乗り込むと、タイミングよく扉が閉まって走り出す。
はぁはぁと胸を弾ませながら、額の汗を拭った。
「よかった……間に合った」
「……他のみんなは間に合ったかな。電車とか、バスとか」
「最悪、タクシーかもしれないね」
金子は締めていたネクタイをグイッと少し緩めて、わりと乗客の多い車内でホッとひと息吐いた。
「明日も朝早いから、みんなちゃんと帰路につけてるといいなぁ」