アイ・ミス・ユー
健也とのことを誤解されたままというのは嫌だったので、さっさとその話を切り出したかったけれど、地下鉄に揺られる金子の横顔はハードな仕事に疲れた顔をしていて。
私の話なんて出来なかった。
ガタンガタンと地下鉄が走る音を聞きながら、真っ暗な窓の外に目を向けている金子を見つめる。
そりゃ疲れてるよね。
ここ1週間、フェアのために頭を悩ませてよりよい結果が出るように画策して、部下に指示を出して上司にうかがって。
明日からはその努力が報われるかどうかの結果待ちになるのだから。
心身ともに疲労しているのは間違いない。
「金子くん」
私が話しかけると、彼は視線を私に移して首をかしげた。
「なに?」
「北18条の駅の近くにある牛丼屋にでも寄っていかない?お腹空いちゃったし」
いつも誘ってくれるのは金子の方だったから。
たまには私から、と思って誘ってみたのだけれど。
「ごめん」
と、あっさり断られた。
「今日はちょっと……。また今度でもいいかな」
「あ、うん……」
気まずそうな金子の表情に地味に傷ついて、そして落ち込んだ。
誘うんじゃなかった、と後悔の念が押し寄せる。
疲れてるのは分かってたんだから、誘うべきじゃなかった。