アイ・ミス・ユー
そのままあまり会話をすることもなく、地下鉄を降りてマンションまで歩く。
いつもならくだらない会話をしていたから、あっという間に家に着いていたっていうことが多くて。
今日みたいに少ない会話だと、マンションまでの距離がとてつもなく長く感じるものなのだと知った。
「じゃあ、また明日。お疲れ様、綾川さん」
マンションの前までたどり着いて、金子が微笑む。
彼が呼ぶ私の名前「綾川さん」は、健也に呼ばれる「結」と比べるとえらく他人行儀だ。
昼間に健也のことがあったからこそ、余計にそう感じた。
「また明日。今日は……ゆっくり休んでね」
「うん、ありがとう」
私たちは手を振り合って、それぞれのマンションへ入っていく。
ガラス張りのエントランスに入り込む前に、もう一度だけ振り返る。
金子がちょうどエレベーターに乗り込むところだった。
こちらの方を見ることもなく、すんなりとエレベーターのドアは閉まってしまった。
━━━━━あっけない。
単純な感想はそれだった。