アイ・ミス・ユー
取り残された私と金子。
沈黙が訪れて、気まずさ全開の空気に嫌な気持ちになりかける。
さて、困ったぞ。
どんな顔して話そう。
「綾川さん」
と、彼の方から話しかけてきた。
ギギギッと錆び付いたおもちゃのごとく、ゆっくりと隣に立つ彼を見上げる。
金子は私をまっすぐに見ていた。
それはさっきと同じ、感情の読めない色をしている。
私はこの手の目が苦手だと直感した。
「久しぶり。俺のこと覚えてる?」
「………………お、覚えてます、一応」
たどたどしい口調でそう答えると、彼はホッとしたように微笑んだ。
「良かった。来たばかりだから慣れなくて足を引っ張るかもしれないけど。役にたてるように頑張るから。これからよろしくね」
……あれっ?それだけ?
キョトンと目をパチクリさせていると、彼は不思議そうに首をかしげた。
「どうかした?」
「…………いえっ」
私はブンブンと首を振り、小さく頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。━━━━━金子主任」
念のため、線を引いておいた。
私とあなたは同期だけど、上司と部下であると。
彼は私の言葉を、優しい微笑みを浮かべたままで受け取っていた。
だけどやっぱり、しつこいようだけど目の奥の本当の感情は読み取れなかった。