アイ・ミス・ユー
「俺が今の会社で頑張ってこれたのは、入社式で結子と話せたから。覚えてないかもしれないけど、君が楽しそうに会社のいいところを話してたから、俺も頑張ろうって思えたんだ」
「………………そうだったかな」
「とりあえず就職しただけの俺には、すごく眩しく見えた」
「ふふ、若かったのね、私も」
「一緒に働くことが出来て、めちゃくちゃ嬉しい。もっと頑張れる。もっと仕事を好きになったよ」
抱き合ってるから顔は見えないけれど、たぶん彼はいつもみたいに朗らかに笑っているんだろう。
「そんな君に一目惚れして、玉砕して、再会してキスしてビンタされて、玉砕して」
「……ゴメンナサイ」
「また再会して、こうして付き合えることになった。俺の粘り勝ち」
金子はゆっくりと体を離し私の頬を両手で包むと、先ほど言っていた小鳥のキスを繰り出した。
「……分かった、分かったから」
風呂上がりみたいに、すっかり真っ赤になってしまった顔を隠すべく両手で覆って、彼の背中を強引に押して玄関から追い出した。
「もう、あなたを草食系男子ではなく、肉食系男子と見なします」
「えっ?不思議系男子じゃないの?」
「いいからっ。早く帰ってシャワーでも浴びなさいっ。またあとでね!」
バタン!と音を立ててドアを閉めて、ふぅ〜と玄関にへたり込んだ。
彼といると私の心臓は、ひとつじゃもたない気がしてきた。
バリバリ仕事している時のあの感じはどこへ行ったのと聞きたいくらい、どうやら彼は私を好きでいてくれているらしい。
通路を歩いていく金子の足音を聞きながら、温かくて優しい気持ちに包まれて。
私も、仕事をもっと頑張ろうって思えた。
恋愛のチカラって凄い。
愛されるってこんなに幸せ。
━━━━━素直になると、こんなにいいことがあるんだ。