アイ・ミス・ユー


結子が主任の金子くんと付き合うようになって数ヶ月が経ち、今野に誘われてジンギスカン4回、カラオケ5回。
なんだかんだで付き合ってあげている私って、死ぬほど後輩思いだ。


「このあとどうします?カラオ……」

「帰るわよ」


ジンギスカンを食べ尽くして、お腹も満たされて。お店を出たところで、お決まりの今野からの二次会のお誘い。
遮るように断ったら、小動物のようにしゅんと縮こまった。


「俺、めちゃくちゃ歌いたい気分なんです……」

「ひとりで行きなさいよ」

「友達いないって思われたくない!」

「誰に」

「カラオケの店員に……」

「くだらないっ」


ナメクジに塩を食らわせるが如く、ピシッとヤツの背中を軽く叩いた私は


「カラオケじゃなくて、居酒屋なら付き合ってあげてもいいけど?」


と、情けの一言を添えてやった。


途端に花咲く今野拓の満面の笑顔。
コロコロ表情を変えて、疲れないのかと問いただしたい。


「さっすが山崎さん!行きましょ行きましょ!」











この決断が失敗だった。







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