アイ・ミス・ユー


その夜、仕事を終えて急いでカフェ・コゼットに向かった。
30分ほど前に洋次郎からラインが来ていて、彼はすでにお店に到着しているらしい。


コーヒーでも飲んでのんびり待っているんじゃないだろうか。


スマホで『もうすぐ着くよ』と洋次郎にラインを送ろうとしたら、タイミング悪く誰かから着信が入った。


画面には『今野拓』の文字。


ここ1ヶ月、ちっとも私に接触してこなかったくせに。
今日は何があったって言うのだろう。


これから洋次郎と会うわけだし、電話が長引いても良くないので後でかけ直すことにして、今野からの電話は無視することにした。
昼間のこともあってちょっとムシャクシャしていたし、落ち着いて話せる気もしなかったから。


「洋次郎、お待たせ」


コゼットに到着すると、入口から近い場所に洋次郎が座っていた。
私が声をかけると右手を上げてニコリと笑った。


「急がせて悪かったな」

「ううん、別に気にしないで」

「なんか食ったら?腹減ってるだろうし、奢るよ」

「彼氏でもない人に奢ってもらうのは遠慮してますので〜」


メニューを開くより先に、店員さんを捕まえてコーヒーを注文した。
洋次郎の前にはすでに半分ほど飲んだコーヒーカップが置いてある。


「で?話したいことって?」


まだコーヒーは来ていないけれど、話の内容が気になったので洋次郎をせっつくように問いかけた。


< 186 / 196 >

この作品をシェア

pagetop