アイ・ミス・ユー
「まぁ、単刀直入に言うとさ。彼女と結婚することが決まったのよ」
若干照れながらも嬉しそうに目を細めた洋次郎。
突然のおめでたい報告にビックリしたものの、即座に私も笑顔になった。
「ほんとに?おめでとう〜!やったじゃん。なになに、プロポーズは洋次郎から?」
「いや、デキちゃって」
思いもよらぬ彼の言葉に、思わず「おいおい」と突っ込んでしまった。
「まさかのデキ婚なのね」
「ほんと、まさかの。でもいいキッカケにはなったけど」
「結婚式は?」
「そう。それが本題」
洋次郎は苦笑いして頭をポリポリかくと、少し体を起こしてなにやら頼み込むような体勢を作り始めた。
「大々的な結婚式は金がかかるからしないことにしたんだけど、レストランウェディングってやつをやろうかと」
「いいんじゃない?親しい人だけ呼ぶやつでしょ?」
「うん。それで、司会を樹理ちゃんに頼みたいわけよ」
え、私!?
驚きすぎて声も出なくて、ひたすら目をぱちくりさせることくらいしか出来なかった。
私が大いに驚くのは分かっていたようで、洋次郎は至って冷静に「急に悪いな」と肩をすくめた。
「2年前に同期のコマちゃんの結婚式の二次会で、樹理ちゃんが司会進行してたじゃない?アレ、かなり俺の中でインパクト残しててさ〜。冷静沈着、かつ的確なツッコミつきの鮮やかな司会だったもんだから」
「そんなことないわよ」
「いや、才能あるって」
そんなもん褒められてもあんまり嬉しくないんですけど。
二次会ならまだしも大事な結婚パーティーを仰せつかうのは気が引けた。
「マジで頼む。レストランウェディングって決まった時から、司会は樹理ちゃんしかいないって思ってたんだ。お礼にディズニーチケット、ペアでプレゼントするからさ」
バチッとウィンクまで飛ばしてきた洋次郎は、もはや断らせる気はゼロで両手は合わせたままである。