アイ・ミス・ユー
どこかのドラマでこんなシーン見たことがあるような、無いような。
どんなつもりで今野は私を連れ出したのか━━━━━。
「なんで俺が来たのか、分かってないみたいっすね」
私の考えを見透かすように、今野はやや不満げに口を尖らせた。
「そりゃそうか。俺の話なんて、ちゃんと聞いてくれた試しが無いですもんね。俺の気持ちなんて無視して、勝手にこうだと決めつけて受け付けてくれなかったじゃないですか」
「な、なんなの一体……」
「山崎さんのことが好きなんですよ」
たじろぐ私に、今野は前置きなど何もなくまっすぐに言い切った。
「だからこうして来たんです。三浦さんとデートしてるって思ったら耐えられなくて。電話にも出てくれないし、コゼットで会うって話してたのは聞いてたから。もう開き直ろうって決めて」
唖然として彼の話しているのを、なんとか理解しようと頭をフル稼働させるものの、いまいち現実味が湧かない。
それどころか、今野特有のふざけた面白い話でもしているのかと脳内で変換しそうになってしまった。
だって、こんな今野は見たことがない。
いつも笑っていて、カラオケが大好きで、グダグダ言いながらも仕事はそれなりにこなす、人懐っこい後輩。
それが、別人のようだった。
その彼が、切なげに顔を歪める。
「好きなのに、どうして分かってくれないんですか……」
苦くて悲しい響きのするその言葉で、胸がズキッと痛んだ。