アイ・ミス・ユー
昨夜はあのあと、洋次郎との事は誤解であることを伝えた。
単に結婚パーティーの司会を頼まれただけだと。
それを聞いた今野は敵意をむき出しにしたことと、とんでもない態度を取ってしまったことを洋次郎に土下座して謝りたいとまで嘆いていた。
「三浦さん、怒ってるかなぁ……」
キッチンで卵を溶いていたら、ボソボソと不安げな声が聞こえてきて吹き出す。
「怒るわけないでしょ。私は洋次郎の彼女でもなんでもないんだから」
「でも超生意気なクソガキって思われてるかも……将来三浦さんが偉くなった時に飛ばされるかも……」
「あんたってほんとバカね。あいつはそんなに心は狭くないわよ」
当たり前に口にした私の言葉で、今野が感動したような表情でいきなり後ろから抱きついてきた。
「ちょっと!こぼれるでしょーが!」
「それ聞きたかったんです」
「はぁ?」
ワケの分からないことを口にするうざったい男を、横目でジロリと睨みつける。
彼は何故かとても幸せそうに笑っていた。というか、ニヤついていた。
「あんたってほんとバカ、ってセリフ。山崎さんの愛がこもってる感じがして好きなんですよ」
「愛なんて込めてないわ!」
「いいんです、それでも。そんなところに惚れたんですから」
どうやらこの男、好きだった女の子に振られてから、私に相談しているうちに言いたいことをズバッと言い、白黒ハッキリしているこの性格が自分に合っているかもと思うようになったらしいのだ。
可愛らしくて守りたくなるような女……よりも、かっこよくて頼りがいがあって、時々弱いのがいいんだと。
私にはさっぱり分からないが、まぁ好きだと言ってくれたのだからそこは素直に受け取ることにした。
一言で言えば、Mなんでしょう。要するに。