アイ・ミス・ユー
さて。
付き合うとなると、男の手網はしっかり握っておきたい私の性格。
ちゃんと言っておかないとね。
「今野。お酒には弱いんだから、飲み会ではビールは3杯までにしなさいよ」
唐突に突きつけられた条件に、今野は私を抱きしめる力を緩めて「えぇっ」と情けない声を上げた。
「そんなぁ!もっと飲めますって!」
「だって酔って記憶失って違う女と寝たりされたら嫌だもの」
「…………ハイ」
「あと、会社の同僚と家族以外の女と2人きりでのジンギスカン及びカラオケは禁止」
「ハイッ」
「それから……」
「なーんだ。山崎さんって案外ヤキモチ焼きなんですね。可愛いところあるじゃないっすか」
あはは、と笑った今野は、自覚が無かった私を振り向かせて再び優しく抱き寄せた。
「じゃあ俺からも条件」
「………………なによ」
「ずっと俺だけ見ててください。それが、絶対条件」
どこのドラマのイケメンのセリフだ、それ。
思わず笑みがこぼれて、でも意外にも単純な男のまっすぐな言葉はけっこう心に染みた。
「仕方ないわね。その条件飲んであげる」
答えるなり、ヤツの唇で口を塞がれた。
うーん、なかなかいいじゃない。
年下男子。
きっとこれからは、こいつに夢中になるんだ。
そんな予感がした。
番外編 山崎樹理のアイ・ミス・ユー
おしまい。