アイ・ミス・ユー
金子の後ろをついて歩きながら、あれ?と思う。
この男……、想像していたような人じゃないのか?
なんて思ったりして。
なんと言うか、もっと腹黒い奴だと思っていたのに。
なに、この「いいひと」感。
見せかけの穏やかさと、見せかけの優しい笑顔なんじゃないの?
そうじゃないと納得出来ない。
5年前、私にあんなことをした男なのに。
いや、そのあと私だって相当ひどいことを彼にしたけれど。
本当に同一人物なのかさえ、怪しく思えてくる。
そこまで考えて、ハッと我に返る。
そしてブンブンと勢いよく頭を振って、甘い考えを振り払った。
違う違う!
金子基之という男は、「いいひと」の仮面をかぶっているだけだ。
本来の姿はもっと意地悪で強引で、他人の気持ちなんてちっとも考えないはずだ。
そうじゃないと辻褄が合わないんだから!
自分に言い聞かせながら、特徴の無い金子の背中に密かに睨みをきかせた。