アイ・ミス・ユー
━━━━━その夜。
金子の歓迎会という名の、販促部による飲み会がすすきのにある居酒屋『一鮮千漁』で開催された。
そこは酒田部長のお気に入りの居酒屋で、新鮮な魚介類をメインに焼酎や日本酒などが豊富に取り揃えられている販促部の行きつけのお店なのだ。
「新主任、金子くんの本店異動を祝して〜!かんぱーい!」
……という号令のような部長のかけ声と共に飲み会がスタートして、はや1時間。
私は金子から一番遠い席を確保し、樹理と共にチビチビと芋焼酎を飲んでいた。
「金子くん、なかなか評判いいらしいじゃない。仕事の合間に店舗回ったり、売れないエリアは積極的にレイアウト変えたり、効果的なポップを即席で作ったり。おかげで売上も上がってきてすっかり部長のお気に入りね」
樹理がホタテの刺身を口に運びながら、テーブルのはるか向こうで部長と今野くんに絡まれている金子を面白そうに見ている。
「合間じゃないのよ、主任としての事務仕事を置いて店舗に行っちゃうのよ。期日ギリまでやらないんだから、あの人」
「でもちゃんと期日までには間に合わせてるんでしょ?」
「…………まぁ、それはそうだけど……」
「サポートしてあげなさいよ、サブでしょ?ニコイチでしょ?」
完全にからかわれているというのは分かっているものの、肯定するのは絶対に嫌なので急いで反論した。
「やめてよ、ニコイチなんて恐ろしい単語出すの。サブって言ったって名目だけだし。実際はみんなと同じ仕事しか出来ないもの。結局権限があるのは役職もらってる人たちなんだから」
「ごめんごめん。それにしても金子くんって思ってたよりも現場主義でビックリなんだけど。販売部の子達が噂してるよ、販促部の新しい主任はよく店舗に降りてくるって」
「そういうのは後輩に任せておけばいいのにね」
ため息を漏らしつつ、金子へと視線を移す。
彼は部長に煽られてビールを飲み干しているところだった。