アイ・ミス・ユー


私の勤める会社は北海道内で広く展開する『小坂インテリア』という家具店の本店である。
道外全国各地にも店舗はあるけれど、基本的には道内での店舗が圧倒的に多い。


本店は中心地でもある札幌市中央区に位置する。


北海道の素材で北海道民の暮らしを豊かにする、という小坂社長が考え出したコンセプトのもと、自社で家具を設計立案・製作し販売しているのだ。


企画開発部や営業部やデザイン部、広報部や製作部などたくさんの部門に分けられている中で、私がいるのは販売促進部。


つまりお客様が求めているものはなんなのか先読みし、もっと売るために必要なものを割り出し、マーケティングしていく場所だ。
時には売り場に立ってお客様の対応をすることも多々ある。


担当する売り場のコーディネートだけでなくお客様の声を聞いて上層部に報告したり、よりよくしていくために考えて話し合って作り出す。
それが販促部の仕事だ。


私の担当はファブリック部門。
主にカーテンやカーペット・ラグ、寝具などのことを指し、勤続6年目のこの頃は入社したての後輩の指導に当たることも多くなってきた。


販売員としてそれ相応の自信とプライドを持って仕事に取り組み、上司からも可愛がられて順風満帆に過ごしてきた。


それなのに。


朝イチで目撃してしまったあの社内掲示板に貼られた辞令。
アレは私にとってかなりの悩みの種だった。


金子が本店に異動してくる。
しかも、販促部の主任としてやってくる。
すなわち私の上司になる。


こんな意地悪なことを、どうして神様はすんなりとやってのけることが出来るのでしょうか。


夢ならさっさと覚めてくれと願うばかりだった。








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