アイ・ミス・ユー
「でもその……なんだっけ?アベレージマン?そういうのどこで見つけるのよ。合コンとか?それとも誰かに紹介してもらうの?」
ブリのお刺身を食べながら、ようやく樹理が彼女に質問を投げかける。
少しは興味が湧いたのだろうか。
「見つけちゃいました。なんと、社内で!」
もったいぶって肩をすくませた翡翠ちゃんは、可愛い顔とはおよそ想像もつかないような大きな口で大ぶりの焼き鳥をガブッと食べて、
「金子主任、まさにミスターアベレージなんです!ドンピシャで!」
と言い切った。
一瞬、時が止まる私と樹理。
「は?……嘘でしょ?」
ようやく出た言葉は、完全に素の私になってしまった。
何度も瞬きをして翡翠ちゃんの大きな瞳を見つめる。
「金子?あいつと結婚するっていうの?」
「嫌だなぁ、もう、綾川先輩ったら!とりあえずお付き合いさせていただいて、そこからですけどね」
「どこがいいのよ、あんな人の!」
思わず声を荒らげる。
ククク、と樹理が笑いをこらえている姿がなんとも言えない。
事情を知っているだけに面白くてたまらないのだろう。