アイ・ミス・ユー
「だって金子主任って特別かっこいいわけでもないけど、まぁまぁいい方の部類に入るじゃないですか。顔もそこそこ、身長もそこそこ、それでいて性格はあの通り優しいし!なにより役職ついてるから、これから出世する可能性もある!これ以上のアベレージマン、なかなかいないですよ」
得意げに語る翡翠ちゃんの話を、私はちっとも理解出来ない。
だけど心なしか樹理はコクコクうなずき始めている。
「要するに金子くんはどの部分においても平均的なんだけど、ほんの少し上に位置するアベレージマンってことね。中の上ってところか?」
「そうそう、そうです!山崎先輩、さすがです〜!」
「でもね、残念ながらあなたの恋はもうすでに破れてるのよ」
「えぇ!?なんでですか!?」
思わぬ樹理の発言により、おそらく気分上々だった翡翠ちゃんのテンションがだだ下がりになる。
見開いていた目が一転して潤み始めた。
コロコロ変わる彼女の表情に、こちらはただただ感心するのみだ。
「特別に教えてあげる」と、樹理が翡翠ちゃんの耳に口を寄せる。
おのずと私も気になって、私たち3人は顔を突き合わせた。
「金子くんの想い人は、ここにいる結子なのよ。ね、そうでしょ?」
「━━━━━えっ?」
コソッとつぶやいた樹理の言葉は、色々なことをだいぶ省略していて。
私はひたすら目を丸くするのみ。
翡翠ちゃんの戸惑った顔が私に向けられたのだけは分かった。
カッと顔が赤くなるのを自分でも感じて、「違う!」と否定した。