アイ・ミス・ユー


カラオケ店に来たのは、酒田部長をはじめ金子や樹理、そしてもちろん翡翠ちゃん。
他にも若手社員はぞろぞろついてきた。


販促部でもムードメーカー的な明るいポジションにいる今野くんの誘いとなれば、おのずとみんな来るのだ。
ある意味、カリスマ性を持っているような。


部長が哀愁漂う五木ひろしを歌い上げているだだっ広くて薄暗いカラオケルームは、無礼講ってやつなのか喫煙者はタバコを吸いまくり、テーブルにはビールが大量に届けられ、カオス状態に陥っていた。


ピッタリ寄り添うように金子の隣をキープした翡翠ちゃんが、「酔っ払っちゃった〜」的な演技で彼の肩にもたれているのが見えた。


やるな、人工天然小悪魔。
落ちてしまえ、金子。


かく言う金子は、涼しい顔で歌本のページをめくっている。


「結子、さっき今野くんがあんたのために中島みゆき予約してたよ」


ニヤニヤと笑いながら樹理が私の脇を小突いてきた。
くそ〜、今野拓。覚えてろよ。


「もう帰りたい……。タバコの煙で具合悪くなってきたし」

「煙いよね〜確かに」


男性社員だけじゃなく女性社員も喫煙者がわりと多いので、部屋の中はかなり空気が悪くなっていた。


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