アイ・ミス・ユー
とりあえず歩き出した金子に合わせて、私もおずおずとついていく。
そんな中、彼が話しかけてきた。
「綾川さんってどこに住んでるの?」
「北17条です」
「…………へぇ。じゃあ職場には地下鉄で通勤してるの?」
「はい、そうです」
「……あのさ、俺と綾川さんって同期なんだよ。知ってた?」
「もちろん、存じ上げております」
「じゃあそろそろ敬語やめてくれない?」
足を止めて金子を見上げると、彼は困ったように微笑んでいた。
「…………そういうわけにはいきません。上司ですので」
ボソボソと答えた私は、彼から目をそらして再び歩き出した。
金子は私の答えが不服らしく、「でも」と続ける。
「上司である前に同期だし」
「同期である前に上司です」
「サブなんだから、気を遣わないでなんでも話してほしいんだ。敬語だと壁を感じるっていうか」
「その通りです。壁を作ってますので。どうかお気にならさず」